一般社団法人葬送儀礼マナー普及協会

人類は有史以来、弔う作業が行われていた

人生におけるさまざまな通過儀礼の中で、最後の儀式となるのが葬送儀礼です。人類は有史以来、さまざまな形で弔いの作業を行ってきました。

3万5000年前から6万5000年前にかけてのネアンデルタール人の遺跡であるイラク北部のシャニダール洞窟の調査では、ネアンデルタール人の化石とともに、数種類の花粉が大量に発見されています。調査に携わったラルフ・ソレッキ教授らは、「ネアンデルタール人には死者を悼む心があり、副葬品として花を遺体に添えて埋葬する習慣があった」との説を唱えています。

日本でも、縄文時代にはすでに死者を弔う作業が行われていました。この時代の墳墓では、大地を楕円形に掘った墓穴に膝を折り曲げた形での埋葬(屈葬)がよく見られ、中には遺体の胸に石を抱かせた形で埋葬されたもの(抱石葬)もあります。こうした方法がとられたのは、死者への恐怖という説や、胎児の姿勢であることから再生を願ったものだという説、あるいは安らかな眠りを実現するための説などあります。

文献では「古事記」(712年)に、神代の天若日子(あめのわかひこ)の死に際して行われた葬送儀礼に触れた箇所があります。これによると遺体は「喪屋」に移して安置し、死者に食事を出し、死を嘆き悲しみ、歌い踊って死者の霊を慰める葬送儀礼が行われていたことが推測できます。

葬送儀礼は形を変えながら現代に引き継がれている

葬送儀礼は、世界中で形を変えながらも脈々と現代に引き継がれています。仏壇や墓など現代に伝わる葬送文化や、お盆などの先祖供養をはじめとする行事も、死や葬送に対する意識の変化、宗教観の変化、家族関係の変化、地域コミュニティの変化などから大きく様変わりしようとしています。
葬送儀礼は、地域によって異なり、それぞれの慣習や宗教、信仰によってさまざまな葬送文化がうまれました。長い歴史を通じてその地域の人たちが築いてきた葬送文化がどのようにして継承されてきたのかを意識することで、葬送儀礼への向き合い方は変わってきます。
人はなぜ弔い、弔われるのか、葬送儀礼を意味のある営みとして理解していく必要があり、私たちにはそれを次世代へ繋いでいく責任があります。