焼香の作法については、葬儀マナーの中でも特に気になる作法のひとつのようで、葬儀マナー系を扱う媒体の取材でも、香典マナーと並んでよく聞かれます。

焼香作法は宗旨・宗派によって異なる

焼香作法についての考え方は、その儀式の宗派に合わせた作法で行うという考え方と、自身の宗派の作法で行うという考え方があります。
現場にいると、通夜・葬儀の場で「焼香は何かですか?」と聞かれることがありますが、それは「相手の宗派に合わせなければ失礼」という配慮からでしょう。
しかし信仰に対する考え方は人それぞれですから、他人は強要できません。
あくまで「この式は〇〇宗の作法では、焼香は〇〇のように行います。」とお伝えするにとどまります。
お香

基本的には自身の宗教・宗旨・派の作法をきちんと把握したうえで、どのようにするかそれぞれで判断することになります。
宗旨・宗派がわからない場合や、参列者が多い場合など「心をこめて1回」でも失礼にならないとされています。
線香の作法も宗派によって異なります。例えば、線香は火をつけて立てる場合と、横に寝かせる場合があります。
共通しているのは、ロウソクや線香の火の消し方です。

口で吹き消さずに、手であおいで消します。

宗旨・宗派による焼香、線香の作法の違い

天台宗
焼香:1~3回
線香:3本たてる
額におしいただきながら焼香
真言宗
焼香:3回
線香:3本たてる
浄土宗
焼香:1~3回
線香:1~3本たてる

浄土真宗(西)
焼香:1回
線香:香炉に横に寝かせて入れる
抹香は額におしいただかず、そのままつまんで香炉へ
真宗大谷派(東)
焼香:2回
線香:香炉に横に寝かせていれる
抹香は額におしいただかず、そのままつまんで香炉へ
臨済宗
焼香:1~3回
線香:1本たてる
額におしいただきながら焼香
曹洞宗
焼香:2回
線香:1本たてる
1回目は額におしいただき、2回目はそのまま香炉へ
日蓮宗
焼香:1回または3回
線香:1本たてる
額におしいただきながら焼香

「立礼焼香」「座礼焼香」「回し焼香」の違い

焼香台の前まで行き立って行う「立礼焼香」、座って行う「座礼焼香」、香炉を回して行う「回し焼香」があります。
回し焼香では、自分の前に香炉が回ってくるので、焼香して合掌し、次の人に回します。膝の上に香炉を置かなければいかない場合など、不安定な場合は次の人にまわしてから合掌します。

キリスト教徒の場合、焼香はする?しない?

キリスト教徒の信者数は、現在日本には人口に対して約8%。
決して多いとはいえませんが、キリスト教徒の方であれば、一度は「仏式葬儀の参列時にはどのようにふるまうべきか」という課題に直面するようです。

その課題に対して答えを見つけるのが難しいようであれば、所属する教会に尋ねているのが一番良いと思います。
現場では、さまざまな方がいらっしゃいます。
例えば

  • 仏式葬儀ではあるけれど、ゆりの花と十字架入りの不祝儀袋に「お花料」と書いて持参する方。
  • 参列はするけれど焼香はしない方。
  • シスターであるけれど焼香をして手を合わせる方などさまざまです。

また、親の葬儀は仏式で執り行うけれど、喪主である自分はキリスト教信者という方もいらっしゃいました。
その方は、「信仰と親への思い、愛情はまた別である」と菩提寺の住職と打ち合わせをし、納骨もすませています(誰がお墓を継ぐのかなど、少々問題もありましたが)。

葬送儀礼マナー検定では、マナーの基本的な考え方のひとつに「相手を思いやる気持ち」を入れています。
「宗教・宗派」や「慣習」なども踏まえつつ、少なくとも周囲に配慮し、故人に対して尊厳を持った行動をすることが大切なのではないでしょうか。