ペット関連の総市場規模は、2021年度の調査によれば1兆7000億円に達しています。

※株式会社矢野経済研究所プレスリリースによる
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3053

猫が犬の飼育数を逆転

日本中で飼われている犬と猫の数は、15歳未満の子供の数を上回っているとされており、推定1800万頭にも及び、犬と猫の内訳は、ほぼ半数ですが、猫が犬の数を逆転しています。その要因は室内飼いの増加と関連していると考えられる。マンションや庭の無い一戸建てでペットを飼う人が増え、より室内で飼いやすい猫の方が好まれていると推測されています。

ペット葬儀の需要が増えている理由

2021年の平均寿命は、犬と猫ともに増加傾向で、犬14.65歳、猫15.66歳となりました。
うち、「家の外に出ない」猫の平均寿命は16.13歳で、ペットも高齢化を迎えていることがわかります。

ペットにもしもの時が訪れ時に、ペット可のマンションや、庭の無い一戸建てで犬や猫を飼う人が増えている関係で、埋葬する場所がありません。そうした流れの中でペット葬の需要が増えています。

こうした流れのなかで、ペット葬だけでなく、ペット用の仏壇や遺骨を入れたアクセサリーなどの関連サービス、さらに、海上散骨や墓石・永代供養料などの高額市場があり、人間の葬儀ビジネスの市場規模は1兆7000億円前後には遠く及ばないものの、その市場規模は350億円前後とも言われています。

葬儀の種類としては、火葬が基本となります。
火葬以外では土葬という選択肢がありますが、自宅の庭などの私有地への土葬は法律上は問題にならないものの、土に還るまでに要する期間(条件により数年~数十年)の間に地表に露出してしまう可能性や近隣への腐敗臭の影響などを考慮すると、犬や猫などの一定程度の大きさの動物であれば深さ1メートル程度は掘る必要があり、相応の労力を伴うことになります。なお、河川や公園、他人の土地などに無断で土葬することは法律で禁止されています(廃棄物の処理及び清掃に関する法律5条)。

ペット火葬の種類

火葬の種類は、運営主体と方式により分類されます。

①自治体

ペットの遺体は法律上、一般廃棄物に分類されるため、飼い主が依頼すれば有料で自治体の焼却炉で処理してもらうことが出来る。自治体によっては動物専用炉を設けている場合もありますが、多くの場合は通常の焼却炉で他の動物や廃棄物と共に処理され返骨はさません。

②寺院

少数ですが、ペット墓地やペット納骨堂を運営している寺院では、ペット専用の火葬場を設けていることもあります。

③民間企業

1. ペット専用火葬場
2. 移動火葬車
を運営している企業もあります。

ペットの場合は、人間と異なり「忌引きがとれない」「仕事を休めない」といった事情から、家族が集まる夜間帯や休日に火葬を希望する人が多いことから、火葬炉を搭載した専用車「移動火葬車」のニーズが一定数あります。

移動火葬車は無煙無臭処理が施され、外見からは火葬車とは分からない配慮がなされています。
基本プランとしては移動火葬車が飼い主宅を訪問し、火葬から埋葬まで一任する形式としている場合が多いですが、火葬中は飼い主宅の近隣を走行しながら30~40分程度で火葬を完了し、飼い主宅に戻りお骨上げ・お別れ式が可能なプランなどが用意されています。

ペットを家族と同様に考える人が増えたことで③の民間企業による火葬を選択する割合が増えていて、全体の4割に達するという指標もあります。

ペット葬も多様なニーズに応えるビジネスモデルの台頭

こうしたペット葬を請け負う企業には、ペット火葬専門業者のほか、元々霊園を経営していたり、お寺などの宗教法人がペット葬を新しく始めることもあります。
さらに昨今では、一級葬祭ディレクターによるお通夜からお別れ式を行うセレモニー形式や、お別れ式のできる立会火葬形式、家族葬形式など、人間のお別れに近く、ペットへの愛情に応じて幅広いプランも登場しています。

市場の形成とともに、潜在需要に供給が追い付く形で、既に参入している企業も、これから参入するも合わせて、これから「百花繚乱の様相を呈する」という言葉があてはまるようになるのではないでしょうか。

引き続き注目の分野ではあります。

(岩田)

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