「北枕は縁起が悪い」
最近はあまり聞かれなくなったという声もありますが、「北枕は死者が横たわる向き」と両親や祖父母に教えられた人は少なくないと思います。
ご遺体を安置することを、「枕直し」「枕返し」などといい、生きていていた人をはじめて死者として扱う行為になります。
その際、通常の位置とは逆向きにしたり、頭を北に向けたり、生者とは違う形で安置をした方が良い、というしきたりのある家や地域はけっこうあります。

お釈迦様は入滅時に頭を北に向けていた

北枕の由来はお釈迦様の入滅時にさかのぼります。
お釈迦様は沙羅双樹の木の下で、頭を北にして西を向き、右わきを下に臥した状態で入滅(没)したと言われ、以降、北枕は死者の象徴となりました。
もっとも、それだけでなく北は陽が入らなくて暗い、寒々しいなど、陰のイメージがあることから死者と結びついたという説もあります。

なお、「枕直し」「枕返し」は、故人を北枕に寝かせることだけではなく、死者の枕元に逆さ屏風(上下逆にする屏風)を置いたり、死者の上に逆さ着物(上下逆にかける着物)をかけたり、守り刀(魔除けの刃物)を置いたりする一連の行為を指すこともあります。

北枕は良いという説も

北枕
北枕は実は健康に良いという説もあります。
地球は北極から南極に地磁気が流れていて、北に頭を向けて寝ると、その地磁気に沿う形となるため血のめぐりが良くなるとか。

お釈迦様も気の流れに身をまかせて北に頭を向けて入滅したのでは、という説もあるほどです。
本当かどうかわかりませんが、右脇を下にするため心臓の負担が軽減されるという人もいます。

さらに、北にある陰の気は悪いもの、という発想ではなく、逆に身体を休めるために適した方位であるという考え方もあります。
静かな気の流れで、身体にたまった疲れを排出し、パワーを充電するのに北枕が適しているという考え方ですね。
風水でも北は金運や健康運アップに良いとか。
このように北枕は決してマイナスの気をもたらす方位ではないと言われています。

実際の現場で北枕は行われている?

実際の現場では、住宅事情や葬儀会館での安置が増え、昔に比べて北枕にするケースは少なくなっています。
縁起やしきたりにこだわらないという家が増えたこともあるでしょう。
どの方角がベストということはありませんが、故人を安置する場所に適している環境という点で考えれば、直射日光があたらず、故人と対面しやすい場所が良いでしょう。

衛生面が心配された昔は、遺体は離れた場所に安置したりもしていましたが、現在はみんなが集まりやすい場所、賑やかな場所に安置したほうが良いと考える人が多くなっています。