喪服は何着も保有するものではないため、一年中を通して同じものを着ている人も多いのではないでしょうか。
しかし、現在の日本の夏は尋常ではない暑さで、毎年熱中症でかなりの方が亡くなっています。
そんなご時世だからこそ、天候や体調に配慮した喪服の着こなしが再確認されています。

喪服が原因で体調を崩してしまっては本末転倒

葬儀用の喪服
通夜や葬儀・告別式への参列時は、基本的に「できるだけ肌を見せない」服を着用することが基本。
近頃、葬儀が行われる会場は、冷暖房が完備され、随時水分補給ができるようなサービスを提供しているところが増えましたが、そうはいっても30度を超す暑さの中で、襟元まで詰まった黒ずくめの服装をしていたら、葬儀式場に到着するまでに具合が悪くなってしまいそうです。
実際、出棺を待つほんの数分間、外で立っていただけで倒れてしまう人もいますし、葬儀式場内であっても熱中症になってしまう人もいます。

「安全・安心」に配慮したマナーも、葬送儀礼マナーの要素のひとつですから、天候や体調を考慮した装いを心掛けることは葬儀マナーの基本でもあります。

喪服も、春夏用・秋冬用の2タイプあるとベター

かつては3シーズン用の喪服が売れ筋でしたが、昨今は薄手の素材を使った春夏用は別に保有しておく人が増えています。
長袖ジャケットでも裏地がなかったり、通気性をUPすることで真夏にも対応できるような素材が人気です。
盛夏用として、胸元の露出を控え、七分袖のカットソーやブラウスをセットにした喪服なら、ジャケットがなくてもきちんとした印象に見えます。

扇子については是非がわかれる

盛夏時に、あると便利なのが扇子ですが、冠婚葬祭で使用する扇子の使い方については是非がわかれます。

結婚式等、お祝いのシーンで使用する祝儀用の扇子は、

「おめでたい事が末広がりになりますように」

という意味で、「末広」と言われています。
また、昔の懐剣の名残と言われているように、自分と相手とのの境目を守る「結界」という意味もあります。

葬儀用扇子
不祝儀で使用する扇子は、末広ではなく結界を目的とした扇子で、

自分と相手の「結界」という意味だけでなく、あの世とこの世の「結界」、さらに故人を尊ぶ意味で使われます。

またこの扇子は、不祝儀袋(祝儀袋)などを出すときに、お盆がわりに広げて出すこともできます。

このような意味からフォーマルシーンで使用することに抵抗を感じる人も少なくありません。
ですから参列者が多い場合など、多くの人の目に触れるような場合は、扇子をパタパタあおいて使用するのは避けたほうが無難です。
ちなみに、一般に販売されている扇子は、涼をとることを目的として作られていますので、基本的にあおいでも問題ないのですが、中にはあおぐことを目的としない少し小さめの喪扇も販売されています。

なお、不祝儀に使用した扇子は、昔はその場限りで使い捨てにしていたそうです。
また一度使ったら要を壊して屋根に投げて処分するという地域もあります。
喪扇は、和装だけでなく洋装でも使用できます。女性が手に持つときは、右手で要の部分をかぶせるようにもち、左手で支えます。
皇族の女性は和装・洋装問わず、喪のシーンではどちらでも扇子を持っていますので、持ち方、扱い方等チェックしてみると参考になるかもしれませんね。