おひとり様とペット

おひとり様、ペットを残して死ぬ前に考えておきたい終活
一人暮らしのパートナーとしてペットがクローズアップされて久しいですが、最近では、需要の高まりを反映してマンションなど集合住宅でも、「ペット可」とする住宅が増えています。
老人ホームでもペット可とする居室フロアを設ける施設もでてきました。

一人暮らしといっても、そこに至る経緯やタイプは様々です。

「20代前半の人」「結婚から遠ざかっている人」「離婚してやむを得ず単身になった中高年の人」「配偶者が亡くなって孤独になった高齢の人」など。
今や単身者のパートナーとしての役割をペットが果たしているという側面があります。

ペットとの共生も時代とともに変化

昔と今では住居事情も大きく異なります。
昭和のドラマやアニメなどでは、庭にお父さんが作った犬小屋があり、犬小屋の入り口にはかまぼこの板を利用したネームプレートがあるといった光景がよく描かれていました。
そこには大型犬や中型犬がいたものでした。
今は広い庭の住居は都市部ではごく限られた存在になり、庭のないワンルームマンションがペットの主な生活の場になりました。
そんな住空間では、大型犬は難しいですから、小型犬や猫、またハムスター、ウサギなどの小動物を飼う人が増加します。爬虫類を飼育している家も珍しくなくなりました。
昨今はペットブームもあり、大型マンションでは大規模なドックランを完備しているところもあり、ペットとの共生は、時代とともに変化しています。

ペットは家族の一員

ペットは今、家族の重要な一員としての存在になりました。
ひと昔前は子供がいない夫婦は少数派で、彼らのことを、「DINKS(ディンクス)」(ダブルインカム・ノーキッズ)と呼んでいていたりしましたが、子供がいない夫婦も増えていて、珍しくもなくなりました。
そんな夫婦も子供の代わりに、ペットを飼うという選択をすることが増えています。
ペットはもちろん人間ではないですが、擬人化傾向がかなり進んでいます。
ワンちゃんに服を着せてベビーカーに乗せている光景を目にすることがありますが、そんな擬人化は、ペットへの投資額が年々増え続けていることからも顕著に見て取れるわけです。

ペット飼育のコストは、イヌ45万円、ネコ21万円

飼い主のいよって様々ですが、イヌやネコに限って直接的にかかる費用の目安として、アニコム損害保険が発表している平均金額(「毎年恒例! ペットにかける年間支出調査〈2017年〉」)によると、以下の通りです。

  • イヌ 年間約45万円(超小型犬 年間約38万円  大型犬 年間約61万円)
  • ネコ 年間約21万円

もちろん、「これほどお金をかけていない」という人も多いとは思いますが、中には高価なエサ、ハイグレードなトリミング、病気の治療費、ペットホテルのお泊り、衣装代などにより、もっと費用をかけている家もあります。

おひとり様、ペットを残して死ぬ前に考えておきたい終活
おひとり様、ペットを残して死ぬ前に考えておきたい終活

ペットのことも考えておきたい終活

近年、ペットも高齢化して、寿命が延びているため、ペットより先に自分の身に健康上の不安が訪れるケースが増えています。事情があって飼えなくなってしまった場合、ペットはどうしたら良いのでしょう。
例えば、急な入院などで一時的に家を空けなければいけない場合は、ペットホテルに預けることができますが、あまり長期間になるとペットホテルの費用が高額になってしまいます。
信頼できる人がいればその人に依頼することもできますが、ペットの世話をするということは、それなりに金銭的負担も伴いますので、よほど理解がない限りは無償で引き取るという人は少ないと思います。

不測の事態に備えて、ペットについて記入する項目のあるエンディングノートが増えました。病気になったとき、老人ホームに入ったとき、自分が先に亡くなってしまった時、終活のひとつとしてエンディングノートに書いておくと、状況の整理がしやすくなります。

ペットを遺して自分が先に亡くなってしまったら

遺されるペットのことを考えて、「自分の財産をペットに」と遺言に記しておきたいと考える人もいますが、残念ながらペットが遺産を相続することはできません。
もし遺言として遺すのであれば、「財産を受け取る代わりに、一定の義務を負担する」負担付遺贈として、「財産を遺贈するので、ペットの世話をしてほしい」という内容の遺言書を作成することもできます。
ただし、遺贈は拒否することもできますので、事前に合意しておくことが必要です。

近年は、NPO法人やボランティア団体などが、ペットの引き取りを行い、里親を探してくれることもありますので、事前にそういった団体に登録しておくこともひとつの方法かもしれません。

しかし、いずれの方法も飼育方法の具体的な内容、病気になった場合の対処等までは監督できず、どれも自分がこれまでしてきたことと同じような飼育を望むことは難しいでしょう。
最悪、トラブルになったり殺処分されてしまう可能性も否定できません。もし自分がいなくなったとき、ペットが安心できる場所をつくることは多くの人の課題でもあります。