多死社会を迎えるなかで、1人暮らしの高齢者の孤独死が増加傾向にあります。
孤独死の定義は明確ではなく、一般的には「誰にも看取られることなく一人で死亡し、一定期間気づかれないこと」とされています。
そのため、全国を網羅した統計なども見当たりませんが、推計2.7万人とされ、自殺者数と数字上では肩を並べています。

孤独死の調査は北海道と鹿児島県だけ?

朝日新聞の調査(2018年)によると、孤独死の発生状況について47都道府県に電話取材したところ、調査をしているのは北海道と鹿児島県のみでした。

北海道は2013年から「死後1週間を超えて発見された人」
鹿児島県では2015年から「65歳以上のひとり暮らしで誰にも看取られずに亡くなり、2日以上経った人」

と定義し、市町村が把握できたケースを集計したところ、

  • 北海道は110人(2017年)
  • 鹿児島県は57人(2017年度)

だったそうです。

孤独死

また、東京都観察医務院がまとめた資料によると、「東京23区内における独り暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数」は、2003年は1,451人でしたが、その後は右肩あがりで増加し、2017年は3,333人に達しています。

内閣府では「孤独死」という表現を使わず、「孤立死」という用語を使っています。
これも明確な定義はありませんが、「社会から孤立した状態で亡くなった」という位置づけだそうです。
ちなみに大阪市住吉区の報告書の中で孤立死とは、「地域との日常的なかかわりがなく、誰にも看取られずに自宅で死亡し、死後発見された場合」と定義されています。

内閣府「平成28年版高齢社会白書」によると、
65歳以上で一人暮らしの高齢単身者は、1980年には約90万人だったのが2010年には約480万人と、男女ともに著しく増加しています。
この傾向から、2035年には男女合わせて760万人を超え、高齢男性の6人に1人、高齢女性の4人に1人が単身者になると推測され、今後も孤独死・孤立死が増加すると考えられています。

孤独死は必ずしも不幸ではない!

自宅でひとりで亡くなると、警察沙汰になり、警察医により死体の検案が行われます。場合によっては行政解剖(事件性の疑いがあれば司法解剖)にまわされることもあり、「孤独死はかわいそう」というイメージが一般にインプットされているようです。

しかし、本当にそうでしょうか?
住み慣れた場所でたった一人で亡くなるというのは、悪いことではなく、その人にとって一番安心できる場所だったかもしれません。
「最近体調が良くないな」と感じながらも、買い物をしたり、食事をしたり、寝床に入って、そのまま目を覚まさなかったとしても、果たして不幸だと言えるでしょうか。
孤独を感じることなく一人暮らしを謳歌していた人もいたことでしょう。大勢の中で、また家族の中で孤独を感じながら過ごす人もいるでしょうから、このような環境の中で「孤独死」を迎えたとしても、形の上では孤独死かもしれませんが、それが不幸であるとは他人が決めることではないと思います。

そうは言っても、死後1週間も10日も発見されないのは寂しいですし、腐敗が進行してしまうと、後片付けや特殊清掃など、後処理に支障をきたします。
そのため賃貸住宅のオーナー向けの孤独死対策として、少額短期保険等では「孤独死保険」も注目されています。

さまざまな孤独死対策

各自治体では、地域の社会資源を把握しながら、独自に孤独死対策に取り組んでいます。
民生委員が定期的に一人暮らしの高齢者を訪問したり、見守り支援員を養成したり、ご近所福祉スタッフを配置するなど、地域での取り組みは、防犯や認知症徘徊対策にも役に立っています。

また、地域で活動する事業者(新聞、ガス、電気、水道、生協、牛乳配達、ヤクルト)等と協力して、支援体制を整えている自治体もあります。

高齢世帯向け「見守りサービス」
近年は、高齢世帯向けに様々な企業が「見守りサービス」に参入しています。

①訪問スタイル

個人宅を訪問することが多い企業が参入しています。(郵便局・宅配会社など)

②センサー・カメラスタイル

自宅にセンサー機器を設置したり、監視カメラを設置したりして24時間体制で安否確認をしています。(警備会社など)

③電話・メール配信スタイル

自動配信の電話・メールを通じて、高齢者と家族間で安否確認を行う。(通信関連会社など)
その他にも、電気ポットの利用の有無で安否を確認したりするのも有名ですよね。

高齢者向け見守りサービス
こういった見守りをネットワーク化することで、孤立防止、認知症対策、虐待防止、消費者被害の防止、災害時における安否確認など、地域の課題に地域全体で取り組んでいくことができることでしょう。
ただ、ひとり暮らしの人にとって見守りは、「見張り」「監視」というイメージがあり、拒否するケースも見られます。
長期間発見されず、部屋の中が惨状になってしまうケースも珍しくありません。高齢になったり、身体の不調を感じたら、福祉サービスや行政の安否確認サービス等を受け入れる準備ができるよう心の終活も必要だと思います。