一般社団法人葬送儀礼マナー普及協会
葬送儀礼は死者を送る儀礼ですから、死者の尊厳を第一と考えます。それをベースにさまざまな要素が融合し、絡み合って、マナー・作法が体系化されています。

信仰・宗教

人はそれぞれ異なった信仰心を持ち、世界にはさまざまな宗教・宗派・教派が存在します。宗教・宗派・教派によって考え方や作法は異なり、死後の世界について説かれている教えが異なります。日本では、長い間神事と仏事が共生する形、神仏習合により冠婚葬祭が営まれてきました。

慣習・習慣

年中行事や冠婚葬祭は、生活リズムをつくる重要な儀礼であり、それぞれの地域社会で、気候や社会情勢などに対応しながら、文化の根幹をなす主要素として今日まで伝承されています。日本でも気候による違い、また農村、山間部、漁村、といった生産生活による違いから、さまざまな慣習が生まれました。日々行っていることが習慣化し、やがてそれが慣習となるケースも多くみられます。

思い・感情

大切な人の死を目の前にした人は、さまざま思いが交差します。悲しみ、衝撃、痛み、恐怖、自責の念……死の事実を受け入れられないこともあります。臨終から喪にいたるまでの一連の葬送儀礼は、その事実を受け止め、故人に敬意を表し、故人との縁を確認する大切な作業です。

思いやり・心遣い

私たちは葬送儀礼に参加し立ち会うことで、互いに支えあい、思いやりを感じるものです。遺された人が死を受け止めていくプロセスの中で、そこに集う周囲は支えとなります。そこにあふれる愛や優しさ、絆を感じることで、死はけっして終わりや無をもたらすものでないことを感じ取ることができます。

安全・安心

現代の日本では、安全・安心という観点で新たな葬送儀礼文化が作られています。例えばかつて土葬から火葬が主流になったのも、公衆衛生的観点から政策として推し進められたもの。また仏壇のロウソクを例にあげると、昨今では高齢者の家にある仏壇では安全性を考慮し、電池式のロウソクがポピュラーになってきました。墓石でも近年は耐震・免振構造で建てられているものが主流です。寺院の本堂や葬儀式場は、バリアフリー化が叫ばれるようになりました。遺体の扱い方、保全処置なども、安全・安心という観点が重要視されるようになっています。

「死」が周囲を大きな悲嘆の渦に巻き込むほどの事実であることは、誰もが感じていることでしょう。その死を悼んで人が集まり、葬送儀礼が行われることで、いのちの大切さを学び、「生」がかけがえのないものであることを私たちは実感するものです。