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近年、お墓にまつわる悩みを聞く機会が多くなりました。
「一人っ子同士の結婚で、両家の墓守をしなければいけない。今後どうしたら良いのか」
「先祖代々の墓が遠方にある。墓守ができないので墓じまいしたい」
といった現在抱える墓の悩みから、
「嫁ぎ先の墓には入りたくない」
といった女性の悩みまでさまざまです。
お墓の形も、墓石を建てるお墓だけではなく、樹木をシンボルとする樹木葬墓地や、納骨堂などスタイルが多様化。
選択肢が増えて、逆に選ぶことが難しい時代になっています。
今回は、その中でも納骨堂について注目してみたいと思います。
特に最近は、電車の車内広告でも機械式(自動搬送式)納骨堂の公告を頻繁に見かけるようになりました。
現在東京23区内で販売中の機械式(自動搬送式)納骨堂は25カ所あり、さらに計画中の納骨堂も数カ所あります。
機械式(自動搬送式)納骨堂とはどのようなものなのでしょうか?
納骨堂とは
まずは、納骨堂の定義を整理してみましょう。
「墓地、埋葬等に関する法律(墓埋法)」によると
「この法律で『納骨堂』とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事(市または特別区にあっては市長または区長)の許可を受けた施設のことをいう」とあります。つまり納骨堂は遺骨を納める「施設」となります。
明治以降、日本においてイエ制度が確立し、お墓は先祖代々、子々孫々継いでいくものと捉えられていました。
近年では、子供や孫に迷惑をかけたくないという考えを持つ人が増えてきました。
先祖代々への墓地へのこだわりは薄れ、従来よりも手軽で契約すればすぐに使える納骨堂を受容する層は確実に増えています。
「ロッカー型」「棚型」「機械式(自動搬送式)」など納骨堂タイプはいろいろ
納骨堂といっても様々なスタイルがありますが、タイプ別に「墓石型」「棚型」「ロッカー型」「機械式」「墓石型」等に分けることができます。
墓石型納骨堂
墓石型は、外墓地の屋内版。「○○家」として承継していくことも可能です。
棚型納骨堂
棚型は、納骨堂のバックヤードの棚に遺骨が納められ、参拝場所が別に設けられるようなタイプ。
ロッカー型納骨堂
ロッカー型は、区画(の使用権)を購入し、遺骨をロッカーのような場所に納めるタイプ。こちらも「○○家」として承継することを目的として購入する人が多いようです。
機械式納骨堂
そして近年特に注目されているのが、ICカードをかざすと遺骨が目の前に出てくるビル型の機械式(自動搬送式)納骨堂。週末や、お盆・お彼岸前になると、お墓に関する新聞折込チラシが多く入ってきますが、都内だと最近はもっぱら機械式(自動搬送式)納骨堂ばかりが目につきますが、その魅力は一体どこにあるのでしょうか。
交通至便、天候に左右されずセキュリティ完備の機械式(自動搬送式)納骨堂
機械式(自動搬送式)納骨堂内部に入ると、いくつかのブースに区切られた参拝スペースがあります。
ICカードをカードリーダーにかざすると、30秒から1分ほどで遺骨が納められた厨子(ずし)が目の前に現れ、お参りすることができる仕組みです。
花はお供えされているので、こちらで持参する必要ありません。また熱源が電気式の香炉とお香がセットされているので焼香(線香)の準備も必要ありません。
手ぶらで参拝でき、草むしりも掃除も不要。暑さ、寒さ、雷、雪……天候に左右されることなく、さらにバリアフリー。交通至便なところにありセキュリティ完備と、利便性が高いのが特徴です。
女子校生やサラリーマンが学校や仕事帰りにふらっと立ち寄ることができるのも、納骨堂ならではのメリットでしょう。
ICカードをかざして液晶画面に表示される名前をタッチすると、該当する故人の写真や動画が音声が流れるタイプもあります。
機械ならではの問題点も
機械式納骨堂の構造は、物流システムで利用されているものと同様で、物流機器メーカー等が開発に関与しています。
自動倉庫はラック(棚)とクレーン一体構造で立体保管し、天井までの空間は最大限に活用されています。
身近なところでは、立体駐車場にもこの構造が採用されています。そのため、ロッカー型の納骨堂と比べて数千単位で区画を設けられる大型のものが多くなっています。
ビル型自動倉庫については、1960年代に国内初納入以来、約50年にわたり、化学・医薬品・食品・飲料・日用品・農作物などさまざまな業界で実績豊富なため、心情的な面はさておき、技術的には問題ないとされています。ただ遺骨の場合は、取り出したり動かしたりするようなことはほとんどなく、「一時使用」を前提としたものではないため、大規模改修工事等月必要になったときの対応については「その時になってみないと……」と各販売業者は一様に言葉を濁しているのが気になります。
機械式のの納骨堂が出回ってから20年、実際にメンテナンス等で機械の入れ替え等をした前例は今のところありません。
都心の機械式(自動搬送式)納骨堂はこれからどうなる
都市部のける墓地不足解消のために、有効な手段として開発ラッシュに沸いた機械式(自動搬送式)納骨堂ですが、そろそろ供給過多の兆しが見え隠れしています。
販売業者へリサーチをすると、
「機械式(自動搬送式)に対する抵抗感を持つ人が以前と比べて少なくなっている」
「最初から納骨堂と決めて見学に来る人が多い」
と好感触を示す一方で、
「機械式(自動搬送式)の場合、早く契約したからといって参拝条件が異なるわけではないため、使用する段階になってから購入しても遅くない」
「後からできる機械式(自動搬送式)納骨堂のほうが快適」
と早めの購入を避ける傾向があると口を揃えます。結果、投資した分の回収が遅れ販売方法や経営の見直しを迫られる業者が増えているのも実情です。
機械式(自動搬送式)納骨堂選びの心構え
機械式のシステム自体は、どの納骨堂もさほど大差がありません。
全体の雰囲気、参拝スペースに配置された墓石のデザインや隣のブースとのパーテーションや、参拝までの待合スペースの設計などで他との差別化を打ち出していますが、選ぶ側の決め手として、「立地」と「料金」という声が多いようです。
これに年間管理料が1万円~2万円程度かかります。
3年ほど前までは、80万円を切ることなかったのだが、近年販売される自動搬送式納骨堂の販売価格は60万円台、70万円台が増加。
高くても100万円を超える値付けをしてくる納骨堂は少なくなりました。
納骨堂の多くは、事業主体が寺院で、本堂が併設されているところが多いと思います。
販売時には、「宗旨・宗派不問」をうたっていたとしても、宗教施設であることにかわりはないので、基本的にその宗旨・宗派の教義に理解のあることが前提となります。
檀家という結びつきではないにせよ、寺院や住職とは納骨堂を通じてお付き合いが発生してきますので、「この寺院と長くお付き合いをしていく」という心構えは必要になります。
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主に個人用途で、骨壺ごとに納骨の期間を設けて、期限が来たら再契約するか、合祀墓に合葬する屋内納骨堂。
また、家族のお墓としての用途で、期間の定めのない契約で、遺骨が一定数を超えると順番に合祀墓に合葬する機械式納骨堂。
最近増えているのが、後者の家族のお墓として利用できるいわゆる「機械式」と言われている納骨堂です。
寺院も将来に備えて機械式納骨堂の運営へ
都心の交通の便がいい寺院には、納骨堂建設の選択肢があります。
納骨堂販売に長けた企業が、寺院に納骨堂建設を持ち掛けます。昨今は離壇もあり、寺院も安定経営を
求めて納骨堂の運営に舵を切るということです。ただし、かなりの建設費がかかります。
都心の一等地の寺院墓地は通常300~500万円はかかると言われていますが、納骨堂は100万円前後の価格帯で値ごろ感があります。
もともとは寺院ではないけれど、立地の良さなどの理由で、納骨堂を建設することもあります。
現在都心では機械式納骨堂が販売を増やしています。
これは団塊の世代のみなさんの改葬(お墓の引越)需要を想定していることは明らかです。
そして、都心部は選択肢が多いので、どこにしようか迷うことが多いですが、まだまだお墓の潜在需要は確実にあると見込まれています。