先日、公益財団法人 国際宗教研究所と上智大学グリーフケア研究所が主催する公開シンポジウム「慰霊をめぐる現在」~「宗教離れ」の時代の宗教を考える~に参加しました。

「慰霊」から宗教のあり方を考えていくという趣旨で、キリスト教、仏教、またベトナム人僧侶の活動を紹介しながら、慰霊と宗教のかかわりを論じていました。

慰霊を通じて宗教は非信者と結びつく

令和の時代になっても、生命が失われた現場には多くの人が足を運び、お供え物をして手を合わせている姿が多くみられます。時には、年齢・性別や国籍、また宗教・宗派の違いや信仰心の有無を超えて、人々は慰霊のために現場に集まってきます。

東日本大震災以降、被災地支援ネットワークグループの事務局長として、活動している日本基督教団石巻栄光協会牧師の川上直哉氏もそのひとり。
英語で宗教はReligionと書かれますが、宗教家のひとりであるラクタンティウスはそれを「再び結ぶ(神と人とを)」と解釈しています。
「神」の捉え方に宗教によって違いはあるものの、弔いを通じて肉体を葬ることと尊厳を守ることは共通していると述べます。

御巣鷹の尾根より

日航機事故の慰霊を行っている浄土宗総合研究所の名和清隆氏は、「御巣鷹の尾根は『慰霊』それも『空の安全』『事故風化の防止・記憶の継承』という価値を担う空間であることを表示する機能がある」と説明しました。

御巣鷹山には、しばらくは故人が発見された場所に木片が立てられていましたが、次第にそれが石塔つまりお墓に変わっていったそうです。

そのお墓は遺骨が納められているわけではなく、手を合わせるお墓です。このように霊魂をおまつりするための墓「参り墓(詣り墓)」の慣習は、各地にみられますので、決して珍しいことではないのですが、御巣鷹の場合は違った意味もあります。
これらのお墓からは「鎮魂」「慰霊」のほかに、「空の安全は亡き人の意思であるとし、その願いを永続化することにより死者の生に意味をもたせたい」とする遺族の願いも感じ取ることができるのではないでしょうか。
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