スタンプラリー感覚は残念な人?
令和に元号が変わった令和元年5月1日、御朱印を集める人が神社仏閣に殺到したことが話題になりました。
明治神宮では御朱印を求める人で10時間待ちだったそうです。
御朱印集めを趣味とする女性のことを「御朱印ガール」と言うそうですが、御朱印集めがブームになったのはいつ頃からでしょうか。
神社や寺院関係者に聞くと、伊勢神宮の「式年遷宮」と出雲大社の「平成の大遷宮」が重なった2013年頃から注目されはじめたようです。各神社仏閣でモダンなオリジナル御朱印帳が出始めたのもこの頃から。イラストやアート系の御朱印も登場し、SNS映えする御朱印が増えたこともブームを後押ししたのかもしれません。期間限定のレアデザインを求めて全国の寺社をまわる人もいるそうです。
しかし一方で、参拝は後回しに御朱印を集める人も多くいるとか。一部ではありますが「手際が悪い」「字が汚い」「ネットで見たのと違う」と文句をいう人もいるそうです。
寺社側でも「スタンプラリー感覚でけしからん」という意見、「それでもご縁をいただければ悪いことではない」と賛否ありますが、いただく側としては少なくとも寺社は宗教施設であり信仰の場であることを認識し、ふさわしいマナーや作法で伺いたいものです。
なお、寺院や神社だけでなく、お城などでも御朱印をいただくことができますが、こちらは寺社の御朱印とは意味が違いますのでご注意を。お城の「御城印(ごじょういん)」は記念印で、その売上は城郭整備等に使われます。また直接書くタイプではなく印刷されたものがほとんどです。
そもそも御朱印とは
日本の神社や寺院において、参拝者向けに押印される印章、およびその印影のことです。
起源は定かではありませんが、奈良から平安時代にかけて、神社仏閣に書き写した経典を奉納した際に引き換えとしていただく、「納経受取の書付」 ではないかと言われています。
平清盛が厳島神社にお経を奉納した「平家納経」がよく知られています。このように経典を写経したものを寺院に納めた代わりに証として受ける領証であったこともあり、「納経帳」と言われていました。
こういった背景があり、現在でも納経をしないと朱印がもらえない寺院も存在しているようです。
さて、「御朱印」と一般的に言われるようになったのは昭和に入ってからだとか。近年の御朱印は納経と関わりなく参詣の証明という性格になっています。
内容としては、朱印はその寺院の御宝印に寺号印や山号印を組み合わせて押印したもので、上から尊号や法語などが墨書されることが多くあります。
社寺名や神仏名など参拝日や「奉拝」などの文字が書かれることも多く、一般的にはその墨書も含めて「朱印」と呼ばれています。
他にも社務所・寺務所や宮司・住職の印、そのほか霊場の札番号や祭事など追加の印が押されることもあります。
御朱印のマナーの基本
御朱印をいただくときには、事前に御朱印の受付時間の確認をしておきます。ただし受付時間内であっても、法要や祈祷が入っている場合は、受付ができないこともあります。
「せっかく来たのに」と不満を吐露するSNSを見かけたことがありますが、こうした気持ちで参拝するのは残念な気もします。
御朱印は参拝した証となるものなので、いただく前には参拝をするのが基本ですが、観光寺院・神社や行事期間中などは人が多いので、先に御朱印帳を預けるスタイルをとっているところもあります。
御朱印は300円~500円がほとんどですが、お賽銭も含めてお釣りのないよう、相応の小銭を用意しておきます。
宗派などによって、御朱印を授与していないところもありますので、ご注意ください。
御朱印帳がないからといって、手持ちのノートを出してはいけません。また転売を目的にいただくことは避けましょう。
コロナ禍では「当面の間、個々の御朱印帳への直接筆書きすることは中止し、紙朱印(置き書きの御朱印)のみの授与としているところもあります。
神社の参拝の基本
・鳥居の前で軽く一礼します。これを一揖といい、軽い会釈のことをあらわします。
真ん中は「正中(せいちゅう)」といって神様の通り道となるので参道の端を進みます。
- 手水舎で身を清める(左手を洗う→右手を洗う→左手の平に水をため、その水で口をすすぐ→再度左手を洗う→柄杓を立てての柄の部分を洗う)。
※コロナ禍で手水舎を使用禁止としているところもあります。 - 本殿や拝殿の前で①賽銭を入れる②鈴を鳴らす③二度深く礼をする(二拝)④二度拍手(かしわで)を打つ⑤一礼(一拝)して終える
寺院の参拝の基本
- 山門の前で合掌し、敷居を踏まずにくぐります。珠数があれば持参していきましょう。(真ん中を歩いても可)
- 手水舎で身を清める
※コロナ禍で手水舎を使用禁止としているところもあります。 - 本尊の前で①賽銭を入れる②焼香③合掌④礼拝する※拍手(かしわで)はしない
御朱印の授かり方
御朱印帳は、百花繚乱で、文具店やインターネットでも様々なラインナップがありますが、寺社の社務所や寺務所でしかいただけない、寺社オリジナルの御朱印帳も希少価値で人気があるようです。
参拝を終えたら、授与所または納経所にて御朱印代を納めて、御朱印帳をあずけます。
御朱印には「書置き」と「直書き」があります。直接書いていただきたいところですが、書置きの「紙朱印」しかないところもあります。
ちなみに、お金を納めることは寄付行為となり、神社では初穂料(はつほりょう)、
寺院では納経料(のうきょうりょう)といいます。
「御朱印代はお気持ちで。」と言われた場合は、300円~をお納めください。
「不要です。」と言われた場合は、300円~を賽銭箱にお納めください。
一部の寺社で郵送対応しているところもあります。
ゆうパックなどのコストを負担し、あて先を自身で書いて申し込みをします。
神社と寺院、同じ御朱印帳でもいい?
日本では1000年以上にわたって神仏習合の時代が続いていました。そのため神社とお寺の御朱印帳を同じにしても差し障りないとする寺社が多いような気がします。しかし明治以降の神仏分離の考え方を軸に神社と寺院は分けるべきという考え方もあるので、これから準備する場合は、それぞれ分けて用意したほうが良いかもしれません。
一度に複数の御朱印帳を出す人もいますが、御朱印は基本的には参拝をした本人のみがいただく性格のものです。(複数いただくことを可としているところもありますが、後に高額で転売されている例もありますので、最近はお断りするケースも増えています。オークションやメルカリで多く出品されています)。
「足腰が不自由で参拝できなかった人の分もいただきたい」等、複数いただきたい場合は、理由を添えてみてください。
個人的には、コレクターとしての趣味というより、さまざまな場所を訪れることにより、豊かな気持ちや清らかな気持ちになれるという側面を意識して考えたいと思います。
関東のおすすめの御朱印ルート
「四国八十八箇所」「西国三十三所」「坂東三十三箇所」「秩父三十四箇所」といった巡礼コースが有名ですね。
東京には弘法大師ゆかりの寺院で構成された「御府内八十八ヶ所」や江戸の観音様を巡る「江戸三十三箇所」がおすすめです。
神社ならまずは都内を中心とした「東京五社」からスタートしてみてはいかがでしょうか。
全国それぞれの地域の「一の宮めぐり」も人気があります。(岩田)
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